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ミーコワールド

ミーコワールド

 

     「Ⅸ」

 ある日、顔見知りの男の人が訪ねてきました。

この人は自衛隊にいた事のある人で体格のいい人です。

「ミーコさん、久しぶりぃ~」

そういう彼の顔は何となく自嘲ぎみでした。

「ほんと、久し振りねぇ。 どうしていたの?」

「いやぁ~、近くにはちょくちょくきていたんだけどねぇ」

「それなら寄ってくれればよかっのに」と言ったのですが

彼も以外な事を言い出しました。

その様子はあこがれのアメリカへ行って来てよかったという風

ではありませんでした。

アメリカのレストランでの出来事を話しに来たのでした。

ひとりでチケットを取って一人旅をしてきたという事でした。

とある高級レストランで食事中とんでもない事にトイレへ行きたく

なったのです。

それで、ウェイターを呼んで「すみません、申し訳ありませんが

トイレはどちらでしょうか?」と尋ねたそうです。

するとそのウェイターは顔色を変えて彼の襟首をつかみ

何か言いながら立たせて入り口の方へ連れて行ったというのです。

それだけではありません。

彼がウェイターに言った言葉を聞いて周りにいた人達が一斉に

持っていたフォークやナイフを皿の上に投げ出したというのです。

彼は何が何だかわからないまま、外へつまみ出されました。

彼は日本に帰って来るまで訳がわからなかったそうです。

帰国してから友達に聞いたら友達は「どんな風に言ったのか英語で

言ってみろ」と・・・。

それで塾で「丁寧語だ」と教えられた通り言うと友達は怖い顔で

「バカ!それはスラム街で日常使っている言葉だ!」

と言ったのです。 そう、彼は嘘を教えられていたのです。

彼は「ようするに、僕は大声で『便所どこ?』と言ったんだ」と

いって肩をすくめ、「しようがないよ」というジェスチャーを

しました。

私は「どこでそんな事教えて貰ったの?」と尋ねたら

「君の隣だよ」と言ってから、

「隣、変だよねぇ」と声をひそめて言いました。

私は「日本人の馬鹿・・・」から始まる呪文のような言葉や

他の出来事も話ました。

彼の顔はだんだん強張りました。

帰り際に「とんでもない奴等だ。 僕は知らない事とはいえ、

とんでもない奴等に大切なお金を与えてしまっていたよ。

ミーコさん、何かあったら僕、力になるよ」と言って

名刺を置きました。

私は彼に「力になってくれるのだったら、あなたの出来事を

警察にいる友達に話して。このままでは本当に日本人がみんな

ダメにされそう」と頼みました。
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